2009年02月14日

蜜月



13巻Lesson72の、ノエル後しばらく経った頃のお話です。




streetlight16.jpg


まどろみの中、のだめはゆっくりと目を覚ました。
薄靄の中をさまようような意識の中、瞬きしながら五感を働かせ、
状況を把握していく。
真っ白なリネンのシーツとブランケットに包まれた身体は温かだったが、
外気に触れる鼻はひんやりと冷たかった。
外で吹きすさぶ風が、ガタガタとレトロなガラス窓を揺らしている。
もっとよく耳を澄ませると、バスルームからはシャワーの音が聞こえてくる。
ゆっくりと手を伸ばすと、さっきまで存在していた愛しい人のぬくもりが、
まだわずかながら残っていた。

相変わらず早起きですねー、先輩は……。

ぼんやりそう思いながら、まだはっきりしない頭を徐々に動かしていく。


昨日、いつものように学校から帰ってくると、テーブルには食べ切れないほどの、
肉と米を使った呪文料理と上等のワインが並んでいた。
それは、明日が日曜日ということもあり、
“今夜はこれ食べて思いっきり愛し合うぞ“という、千秋からの無言のラブコール。

相変わらず料理に気持ちがダダ漏れすぎデス、ムッツリの天才首位打者さんは……。

そう思うと、可愛くて愛しくて、でもくすぐったくて恥ずかしくてたまらない。

「何不気味に笑ってるんだ。ほら、さっさと手を洗ってこい!」

思わずくすくす笑っていると、とたんに不機嫌になってしまう。
でも、そんな素直じゃないところが、たまらなく好きで愛しいと思ってしまう。


stew1.jpg


その後2人でまったり夕食を食べ、お風呂に入り、ピアノを存分に弾いて、そして―――

そこまで思い出して、のだめはかあっと耳まで赤くなってしまい、
そのままベッドに潜り込んでしまった。


千秋はとても優しい。
ベッドの中で優しく唇を食み、長くて繊細な指で身体を弄り、徐々に開いていく。
甘く低い声を優しく囁きかけ、徐々に緊張を解きほぐし、
そしてそれはいつしか艶めいていく。

最初はあんなに痛くて痛くて死んじゃうかと思うほどの激しい痛みだったのに、
それでも初めて千秋と繋がることが出来た喜びで、あのノエルの夜は、
生まれて初めてと思えるほど本当に幸せだった。
それからは、夜毎千秋に愛され心も身体も一つに溶け合い、
まるで夢のような日々を過ごしている。
そんな自分が幸せすぎて、心が幸福で甘く満たされていく。

はうぅ、幸せすぎて怖いくらいデス〜……。


恥ずかしくてベッドの中をゴロゴロしていると、やがてシャワーの音が止み、
バスルームのドアを開ける音が聞こえてきた、
しばらく衣擦れの音が聴こえ、やがてキッチンからカチャカチャと音が聞こえてくる。
ジューサーが回る音、野菜をトントンと軽快に切る音、
ボールを泡だて器でカチャカチャとかき混ぜる音が聞こえてきた。
ジュワーッとフライパンで何かを焼く音が聞こえ、
そしてこんがり焼けた発酵バターたっぷりのパンと、
ベーコンとソーセージと卵の焼けるなんともいい匂いが、のだめの鼻腔をくすぐっていく。

今日の朝御飯は、フレッシュフルーツジュースとフレッシュサラダ、
そして発酵バターたっぷりのクロワッサンとマッシュルームオムレツ、
カリカリベーコンとこんがり焼けたソーセージ、そしてコーンクリームスープ、
あとこの匂いは……パンケーキですね!


breakfast2.jpg


なんとも言えない良い匂いの中、温かなベッドの中でまどろんでいるのだめをよそに、
20分もしないうちに作り終わったばかりか後片付けまで終わらせた千秋が、
ベッドルームに入ってきた。

「おい、いつまで寝てるんだ!さっさと起きろ!」
「えー、寒いデス〜まだ眠いデス〜」
「オレはシャワーも着替えも朝飯作りもとっくに終えたぞ!」
唇を尖らして抗議するも、軽く睨まれる。

「じゃあせめて、王子様のキスで目覚めさせて下さい♪」
「アホか!ほら、さっさと起きろ!……うわっ」

ブランケットを無理やり引き剥がそうとした千秋の腕に、
のだめはすばやく手を伸ばし、思いっきり引っ張る。
油断していたこともあり、バランスを崩した千秋がベッドに倒れこむと、
のだめ両手で千秋の頬を挟み、すばやく唇に自身のそれを重ねた。

「王子様が照れ屋さんなので、眠り姫からキスしてみました♪」

呆然とする千秋の顔がおかしくて、でも可愛くて愛しくて、
のだめは何度も何度も唇を重ねる。

「先輩、好きデス!世界で一番だーい好き!!!」
満面の笑顔でそう言い、ぎゅっと抱き締しめる。

はうぅ、いい匂いですネ……幸せデス〜♪

存分に匂いを堪能し、そろそろ起きようと身を起こそうとすると……。

「……って、あり?先輩?」
いつの間にか、体制が入れ替わり、千秋に組み敷かれている自分に気付く。

「……これも全部、おまえが悪い……」
その瞳は、昨晩と同じ情欲の色に染まっているのを理解する。

「え、で、でも先輩、朝御飯は……?」
「……後で温めなおす」
ゆっくりと項に舌を這わせながら、艶めいた声でそう囁く。

「……はっ……朝一でする予定の勉強は……ひゃあぁんっ!」
「……後でちゃんとやるから、今はこれに集中してろって……」
パジャマを捲し上げながら千秋は、ちょっとイラつきつつ答える。

もう、本当にムッツリの首位打者さんなんだから……。
でもそんなわがままでエッチな所も、たまらなく愛しくて。
何より自身の肌にその指が唇が触れられるだけで、そこがじんじんと熱を持つようで、
蕩けるような甘い痺れに身体が支配されてしまう。

「先輩は、やっぱりムッツリカズオですネ」
「るせー、黙れ!」

真っ赤な顔でそう言い、噛み付くような強引なキスで、
のだめのおしゃべりな口を塞いだのだった。


bed9.jpg


―――その頃、フランクの部屋では―――


「ねぇ、今週の日曜日も千秋の部屋から午前中ピアノの音、しないわね。
 まーたいちゃついてんのかしら。ホント、鬱陶しいわね〜」

「まるで発情期の猫だネ!」

「それを言うなら孔雀でしょ」

「しょうがないだろ。2人は今蜜月なんだから」

「何よ、その“蜜月”って」

「なんでも日本語で“新婚期”とか、“ラブラブ期”とかいう意味だって」

「あんた、本当にそういう無駄な知識は知ってるのね。さすがオタク」

「オタクは関係ないだろ!ターニャも早く蜜月を過ごす相手みつけろよ!」

「うるさい!ほっといてよ!」

「あの2人は年中蜜月だヨ……」


独り身3人トリオの苦悩は、まだまだ続く……。


―――fin―――



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posted by 秋月 楓 at 03:00| Comment(5) | のだめSS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
きゃーー!!!新しいお話があるーーーぅ!!!
新しいお話嬉しいですv
密月…。万年密月ですよね、この二人は(*´エ`*)
せっかくの美味しい朝食も温め直しとはw
のだめの甘い蜜に捕まった、千秋はムーンイエローの黄色い蝶々ですねwww
甘いお話ありがとうございました♪
風邪はもう大丈夫ですか?
どうかご無理なさらずに…
Posted by oliver at 2009年02月15日 11:03
>oliverさん
いつも嬉しい感想、本当にありがとうございます!
バレンタインデーではないのですが、冬のラブラブ話を書きたくなって頑張っちゃいましたw
もうこの2人は日干し期間でさえも、互いの愛を深めているので、万年蜜月ですよね!
きっと毎週日曜日はこうやって朝食の温め直しは、恒例行事になってると思いますね。
のだめの甘すぎる蜜に吸い寄せられるシンイチさんのハニーハント話、
気に入って頂けて嬉しいです。
風邪はもうすっかり良くなり、それはもうピンピンしてます。
心配して頂いて、本当にありがとうございました!
oliverさんもお身体にはくれぐれも気をつけて下さいね!(^▽^)


Posted by 秋月 楓 at 2009年02月16日 01:35
新しいお話ー!!
ラブラブ蜜月堪能中な二人が大好きです。
独身3人トリオのつぶやきが楽しいです。
新しいお話をありがとうございました。
Posted by すぅ at 2009年02月17日 12:11
新しいお話を楽しみにしていました。とても幸せな気持ちになり嬉しかったです。ご多忙でなかなか難しいでしょうが何かひらめいたらまたのせてくださいね。うっとりするような甘い二人のお話が大好きです。あちら方面のお話もお待ちしております!?
Posted by みみりん at 2009年02月17日 22:56
>すぅさん
感想ありがとうございます!
独り身トリオがぼやきっぱなしになるほど、濃密で甘いこの時期のことは、
妄想していてすっごく楽しかったです♪
またぜひいらして下さいね!

>みみりんさん
長い間お待たせしました!
喜んで頂けてなによりです♪
うっとりねっとりするようなあちら方面のSSが書けるように頑張りますね!
Posted by 秋月 楓 at 2009年02月23日 02:25
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